教室関係コラム

2014.06.18

第11回日独皮膚科学会(GJSD)

第11回日独皮膚科学会
German-Japanese Society of Dermatology (GJSD)
会頭:Alexander Enk Heidelberg University教授
会場:Marriot Hotel Heidelberg      
会期:2014年6月11−14日

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 日独皮膚科学会はハイデルベルグ大学教授のアレクサンダー・エンク先生が第11回大会の会頭を務められ、初夏と言うより真夏を思わせるドイツの古都ハイデルベルグで開催された。西山茂夫北里大学名誉教授、植木宏明川崎医大名誉教授は残念ながら欠席されていた。前回書いたように本学会はドイツに留学された先生を中心に組織された学会で、第一回大会はドイツHeidelbergでHornstein先生を会頭に開催された。その後、3年毎に日独交互に開催されている。日本では過去、植木先生が倉敷で第2回大会を開催され、その後西山先生が箱根、西岡清東京医科歯科大学名誉教授が奈良、勝岡憲生先生が横浜.荒瀬誠二先生が徳島で開催された。ちなみにドイツ側はSchopf, Freiburg大学教授、Happle, Marburg大学教授、Mauer, Dresden大学教授、Elsner, Jena大学教授がそれぞれ開催されている。私もMarburg以来参加しており,2002年に西岡先生が開催された時には長崎でPost Congress Meetingを担当させて頂いた。雲仙などに案内し、温泉や海の幸を楽しんで頂いたことを思い出した。今回はより日独の交流を密にする目的で、会頭のEnk先生とも親しい、島田眞路山梨大教授、戸倉芳樹浜松医大教授、天谷雅行慶応大学教授なども参加され、日本側からは最終的に新入会員が20名も増えて会員数が100名近くとなりドイツ側の倍になったそうである。発表はドイツ側、日本側からあわせて39題の口頭発表と27題のポスター発表があった。今回もElsner教授以外に、Munchen大学のThomas Ruzicka教授、Andreas Wollenberg 教授、Hidelberg大学のDiepgen教授などと再会できた。大阪大学からは片山、種村篤、田中文、永田尚子、廣畑彩希が参加、発表した。

プログラムはこちら(pdf)

ハイデルベルク大学のAlte Aula

 大会は6月11日夜のWellcome reception(ハイデルベルク大学のAlte Aula)から開始されたが、我々はフランクフルトからのバスの便が悪く出席できなかった。参加された荒瀬先生からのお話では立食で日本人の参加者の方が多かったそうである。ただゲーテの有名な「若きウェルテルの悩み」の舞台がハイデルベルクの街だと思っていたが、実際はフランクフルトの北のヴェツラーという街とのことであった。

 翌日の朝8時30分からは天谷教授のKey note Lecture、その後一般の口頭発表が続いた。今回は日本の若い先生方の活躍が目立った学会で、英語での発表とその後の討論もしっかりと受け答えされる先生が多かった。ただポスター発表に回された演題にも多くの素晴らしい仕事があったが殆ど討論がなかったのは今後の宿題かと考える。2日目の夜は旧市街に繰り出し、オープンテラスでのドイツ料理とワイン、ビールを楽しんだ。その後引き上げる途中で西岡清先生ご夫妻とばったり会い、自然と二次会になった。その席で、西岡清先生から最近の若い先生とは、コミュニケーションを取るのが難しくなったと、いつもの少しシニカルな口調で語られた。久しぶりの西岡節を堪能し、教室の若い先生方も日本の皮膚科学者を代表する偉い先生と話が出来、得るところも多かったようである。また午後の乾癬のセッションで膿疱性乾癬には乾癬から移行するタイプと高熱とともに膿疱性の病変が発症する von Zumbusch型の2型があり、Munchen大学名誉教授のPlewig先生から、von Zumbuschがミュンヘン大学の教授であり、ミュンヘン大学には彼に関する資料も多く残されていることをおっしゃられた。翌日の感染症のセッションでもPlewig先生はHansen病がベルゲンを中心としたノルウェーに多く、ノルウェーの医師Hansenが風土病的な要素があることを報告した事を歴史的に述べられ、免疫が低下した患者では疥癬が重症化することを話され、ノルウェー疥癬の由来がやっと理解できた。最近の先生方はかつてHansen病がLeprosy, Aussatzなどと呼ばれていたことなど知らない世代となりつつあるが、病気の歴史的な経過を勉強しておくとさらに皮膚科学が面白くなるかと改めて思った講演であった。Plewiig教授は「Pantheon of Dermatology」という、歴史に名前を残す皮膚科医の業績や人物像を紹介した素晴らしい教本を昨年上梓されたが若い先生も是非一読されることをお勧めする。

 このほか、Hand Eczemaに関する口演が2題あり、職業病としての重要さを認識し、治療を積極的に皮膚科医が指導することの重要性を強調されていた。ドイツの皮膚科学は伝統的に全身を診て治療することが要求されてきたが、K大学のS教授に聞くとかつて200床あったミュンヘン大学の病床が現在は50床にまで、減少していることや、薬疹を疑っても積極的な検査をしなくなってきているようで、ドイツの皮膚科学も少し様変わりしてきているのかもしれない。
ただ私の友人、E教授が自家用飛行機を持っている、あるいはEn教授が6,000本の貴重なワインを所有しているというような話を聞くと日本の皮膚科教授との差が身にしみる気がするのもやむを得ないかとも思う。日本の若い世代のモチベーションがあがるような国策を是非進めていただきたいと願うのは私だけではなかったのではないかとこの原稿を書いていて思った次第である。
ただ毎回参加するたびに感心するのはリタイアされた先生方が非常に活動的で、また驚くほど博識であり、専門外の分野でも鋭いコメントを発せられることで、我々の世代も、もっと勉強することがあることを再認識させられる。Post congress meetingはミュンヘン大学のThomas Ruzicka教授が担当された。
 次回は2016年に東京医科歯科大学教授の横関博雄先生を会頭に、Post congress meetingは福島医大の山本俊幸先生が開催される予定で今から楽しみにしている。

大阪大学大学院情報統合医学皮膚科 片山一朗
平成26年6月18日掲載

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