IDEA参加記
6th INTERNATIONAL CONGRESS ON DERMATO-EPIDEMIOLOGY (IDEA)
CONGRESS SITE: Skanes Universitetssjukhus Hudkliniken Malmo Sweden
President: Ake Svensson
26-28 August 2012
室田浩之
6th International dermato-epidemiology association congress (IDEA)に出席いたしました。現在、私たちは大阪にてアレルギー疾患の有病率、自然史に関する調査を行っています。このような疫学調査は単に数字を捻出するのではなく、社会に反映させてこそ価値があります。疫学に関してまだまだ勉強不足だった私にとって、本学会は渡りに船でした。欧米にはEuropean Dermato-epidemiology Network(EDEN)やAmerican Dermato-epidemiology Network (ADEN)という皮膚疾患の疫学に特化した組織があり、合同定例会(IDEA)を開催しているようです。疫学を切り口に環境と皮膚の関係を明らかにし、社会全体に働きかける事によって皮膚疾患の罹患率減少につなげています。日本でもこのような活動を期待したいところです。
職業病のセッションではEU連合が取り組んでいる金属アレルギー対策の効果に驚かされました。EUでは法的規制によって製品に含まれる金属の明示が義務つけられた結果、金属による接触皮膚炎罹患率が他国に比べ激減していたのです。疫学の結果が疾患予防につながった大きな成果の一例といえましょう。
アトピー性皮膚炎のセッションでは近年注目を集めるフィラグリン遺伝子変異が治療効果予測因子として使えるか検討されていましたが、現時点ではまだ明確な答えはないようです。アトピー性皮膚炎の一部に見られるとされるフィラグリン変異をどう臨床に結びつけるのか、現代の課題と言えそうです。
スウェーデンのグループは有病率を調べる目的で独自に作成した小児アトピー性皮膚炎診断アンケートの調査結果をISSACやブリティッシュ基準と比較し大きくそぐわなかったという報告をしていました。つまり、このアンケートはわずかな質問でアトピー性皮膚炎症状の有無を判断できるのです。アンケートの有用性を過去のアンケート結果と比較するという検証手法に違和感を覚えるものの、調査される母体数が大きな意味を持つ疫学調査では臨床症状の個々の特徴を反映しにくいという現実に私自身直面しており、臨床家としてこのような問題が解決できるような評価項目の立案を行っていきたいと思いました。
最後に、開催地であるスウェーデンのマルメという街はとてもかわいらしい街でした。ジブリの「魔女の宅急便」の舞台となった“海の見える街”はバルト海に浮かぶ島がモデルと聞きました。マルメのカラスは日本のものよりも小型で「キョッキョッ」と鳴いているのを聞いて魔女の宅急便にでてくるカラスの声と同じなのに感動いたしました。
http://www.idea2012.net/pics/1/2/karta_oresund.pdf
平成24(2012)年9月10日掲載