教室関係コラム

2012.04.10

Keystone Symposia 2012

Keystone Symposia 2012 “Fibrosis” に参加して

壽 順久

演題名:
Periostin, a matricellular protein, accelerates wound repair by activating dermal fibroblasts 壽 順久

ぶきたの学会見聞録

写真1:Big Sky Resortの写真です。非常にきれいなところでした。中央に鋭くそびえるのが、ロッキー山脈のLone peakです。かっこよかったです。

 今回、Periostin and Wound healingで共同研究させていただいた佐賀の出原教授のお誘いで、2人でモンタナ州のBig Sky Resortで3月29日~4月4日に開催されたKeystone symposiaに参加してきました。正直僕みたいな下っ端が、他大学の教授と、しかも2人きりで海外の学会に参加する、というシチュエーションは、気が重い以外の何者でもありませんでした。3月28日朝9:00に自宅を出発し、伊丹→羽田→成田→シアトル→デンバーに着いたのが、ちょうど24時間後のアメリカ時間の3月28日夜19:00でした。デンバーのホテルで一泊し、翌朝6:00に出発、デンバー→ボーズマン空港→バス移動→Big Sky Resortに到着がちょうど12:00です。これまでいくつかの海外の学会に参加させていただきましたが、これほどしんどい移動はありませんでした。会場は、びっくりするぐらいのど田舎で、スキーリゾートのホテルのワンフロア(でっかい結婚披露宴会場くらいのサイズ)1部屋のみです。そこに大体400人弱(日本人は20人ほど)の参加者が入れるようになっています。どこにも行くところはありません。ただでさえ重い気分で出発した学会でしたが、到着時には参加するのも嫌な位テンションはだだ下がり状態でした。

写真2:Northwestern大学のJohn Varga先生のラボのエース、Jun Wei先生です。僕のつたない英語にも気軽に対応してくれました

 そんな中学会がスタートし、僕は初日は後ろから3列目くらいに座り、ボーっとしていましたが、驚いたのは、前の席をみんな狙って着席し、ほぼ全ての席がぎっしりと参加者で埋まり、みんなが必死になって講演を傾聴し、ディスカッション時間にはみんながこぞって質問する、という参加者のスタンスでした。もう一つ驚いたのが、Fibrosisというもの、そのものです。僕という一人の皮膚科医がFibrosisと聞いてイメージするのは、創傷治癒やケロイド、強皮症といったところで、あとせいぜい肺線維症が浮かぶくらいです。この学会は違うんです。心、肺、肝、腎、そして皮膚と、ありとあらゆるジャンルの臨床と研究を行っている人たちが、Fibrosisに関していろんな角度から議論する会なんです。むしろ皮膚のFibrosisに関しては、少ないほうでした。皮膚の線維化を少しかじっただけの僕としては非常に衝撃的でした。気づいたら数時間で僕自身も activateしてしまい、午後は真ん中の席をなんとか確保して、わからない英語を必死になって聞いていました。そして翌日からは、学会が始まる1時間前に会場に行き、前の席をとり、午前午後3時間ずつ必死に話を聞いてメモをとる4日間でした。最近研究のアイディアが浮かばず、スランプ状態だったんですが、3日目くらいからいろいろなアイディアがどんどん浮かんできて、非常に有意義な5日間となりました。あまり自慢できることではないですが、これほど必死になった学会はいままでにありませんでした。また東大の循環器の先生や広島大学のインテグリン研究室の先生とも知り合いになり、自分が全く知らない世界を知るいい窓口となる学会でした。

写真3:今回お知り合いになった先生方です。左が広島大学の西道先生で、インテグリンの専門家です。いろいろと教えていただきました。中央の方はNorthwestern大学小児科の林田先生です。腎硬化症の専門家で、こう見えても准教授でらっしゃいます。慶応大学からChicagoに留学し、そのまま居ついてしまった女傑です。

 自分のポスター発表はというと、皮膚科領域の先生が少なかったにもかかわらず、心臓や肺、腎臓、そして癌のFibrosisをやっている先生方から多数質問を受け、英語の得意でない僕はしどろもどろでした。(だいぶんと出原先生に助けていただきました)
 学会は朝8:00から11:30くらいまであり、午後は一旦休憩、夕方17:00から再開し、20:00に終了といった感じで、昼間は一応ポスター鑑賞になっているんですが、おそらくスキーでもしてろよ、というものでした。なにも道具を持っていってませんでしたが、僕も最終日にはスキー板と靴だけ借りて、ジーパン姿でスキーをしてきました。食事は悲惨でした。5日間ほぼパンとバーガー(マシだったのが、エルクバーガーとバッファローバーガー)で、ライスは存在しませんでした。今まで行った学会で一番悲惨な食事でした。
 まとめると、今まで行った学会の中で、最も勉強になり活性化した学会であり、最もしんどくてめしの不味い学会でした。Keystone Symposiaは様々な場所で開催される学会で、アメリカ3大学会(ほかゴードン、コールドスプリングハーバー)に挙げられるほどの先端的な学会のようです。また是非行きたいですが、もう少し行きやすくて食事がおいしいところでの開催を願う学会でした。皆さんもぜひ一度味わってみてください。
(正確には、学会ではなく、会議、研究会が正しいと思います。)

2012年

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