長崎大學医学部皮膚科学教室開講100周年記念
日本皮膚科学会長崎地方会第322回例会
2014. 4.12-13
長崎ベストウェスタンプレミアホテル
長崎大學良順会館
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗
長崎大學皮膚科学教室が開講100周年の記念すべき年をお迎えになるということで、この度記念式典、地方会で講演、祝辞を述べる機会をいただいた(写真、プログラム)。
長崎大學医学部はオランダ人医師、J.L.C Pompe Van Meedervoortが1857年11月12日に設立した長崎医学伝習所をその礎とし、以後多くの蘭学、西洋医学の人材を輩出し、日本の近代医学の発展に貢献したのは皆さんご存知の通りである。私自身は現在13代目の教授である宇谷厚志先生の前々任11代教授として、1996年7月1日付けで着任し、2004年2月28日まで7年9ヶ月奉職させていただいた。私が在任中,長崎大學医学部開講140周年記念祝賀会が催されたことも懐かしく思いおこされた。
私の記念講演の演題は「皮膚の恒常性とアレルギー:長崎医学から学んだこと」とし、長崎大學在任中に研究を開始し、大阪大学に転任後も継続している研究を紹介させて頂いた。まず私の前任の吉田彦太郎先生と阿南貞男先生が着手された、長崎大學新入生のアトピー性皮膚炎検診の成果を紹介させて頂いた。この研究はアトピー性皮膚炎の疫学研究の継続的な研究として画期的な成果を残し、大阪大学でも2011年から3年間行った厚労省の思春期アレルギー患者の動態研究と医療経済への影響という班研究に繋がった。次にベ・サンゼ先生が見いだした、非神経組織である皮膚のケラチノサイトが神経ペプチドであるサブスタンスPを産生し、Th2型アレルギーを増幅すること、アトピー性皮膚炎病変部由来の線維芽細胞はサイトカイン刺激への高反応性を継代培養後も維持し、Atopic fibroblastともいうべき形質を獲得していることを紹介した。この研究は現在室田先生がアーテミンという新たな神経成長因子を発見した研究に繋がり、痒みの研究に大きな貢献をしている。次に熱帯医学研究所の小坂教授と共同研究し、江石先生が見いだされたアトピー性皮膚炎での発汗機能の低下にかんする研究を紹介した。この仕事が松井佐起先生、室田先生の2光子顕微鏡によるエクリン汗腺の発汗動態を世界に先駆けて記録した画期的な研究に繋がり、講演後の懇親会でも多くの賞賛の声を頂いた。さらに長崎大學で開始した尋常性白斑にたいする活性型ビタミンD3の臨床研究がTh17疾患としての自己免疫性白斑の病態解明に繋がり、抗IL17A抗体の治療効果の検討まで進んでいること、腫瘍医学の松山俊文教授の指導で開始したTNF受容体p55ノックアウトマウスでのブレオマイシン誘導性強皮症モデルで強皮症のライフサイクルが1週間で見られることの発見、そして抗IL6受容体抗体の人への応用が進んでいることを話させて頂いた。私自身長崎大學で蒔いた種が大阪の地で大きく育っていることを再認識した今回の記念地方会でもあった。また長崎大學で一緒に働いた多くの先生方と再会でき、「当時の仕事の意味がやっと分かった」、そして、「今の仕事に繋がり大変嬉しい」とのコメントも頂き本当にありがたく、久し振りに感動した夜でもあった。最初に祝辞を頂いた片峰茂学長からは2001年に私が会頭を務めたシンポジウム「皮膚感染症の新たな視点」でプリオン病に関する講演を頂いたことにも触れて頂き、あのときの講演が片峰先生の研究にもブレークスルーになったという嬉しいコメントや河野茂元医学部長、現病院長からも私と同じ頃に教授に就任した時のエピソードを紹介して頂いた。野北先生は昨年101歳でご逝去された。あと1年間お元気であればと残念であったが、逆に若い元気な皮膚科医が育ちつつある現状を見て安堵されているかとも思った。
懇親会後は銅座に席を移し、長崎大學のラボの方や当時の弟子の先生方と懐かしいグラスを傾けた。この席には東京から遅れて参加した室田先生、翌日の発表を控えた山岡先生も同席し、懐かしい話に時間の経つのも忘れ話し込んだ。この後の3次会には博多から駆けつけてくれたベ・サンゼ先生や獨協医大の濱崎洋一郎教授など男のみの6人で日が変わるまで私の昔なじみのお店で楽しい時間を共有することができた。
また学会中、長崎のお菓子とともに歴代の教授の写真を印刷したチョコ(写真)も提供され、翌日特別講演をされた京都大学の宮地先生からは私のチョコが一番売れていると聞いた。
2日間に亘り立派な会を主催して頂いた宇谷教授、教室の先生、そして
懐かしい、同門の先生には心より御礼を申し上げ、今後の長崎大學皮膚科のさらなる発展を願って御礼の言葉としたい。
記念式典で挨拶される宇谷厚志教授
大阪大学大学院情報統合医学皮膚科 片山一朗
平成26年4月15日掲載