教室関係コラム

2014.10.27

第65回日本皮膚科学会中部支部学術大会

第65回日本皮膚科学会中部支部学術大会
会長:岡本祐之 関西医科大学教授
会場:グランフロント大阪:コングレコンベンションセンター
会期:2014年10月25−26日
テーマ「せやねん、やっぱり皮膚科学」

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 秋たけなわの10月25−26日の2日間にわたり、第65回日本皮膚科学会中部支部総会がグランフロント大阪:コングレコンベンションセンターで開催された。会場は今話題のグランフロント北館にあるコンベンションセンターで、皮膚科関連の学会が開催されるのは初めてであり、私も楽しみに参加した。
ただ予想外(予想通り)に阪神タイガースが日本シリーズに進出し、甲子園での初戦があり、参加者が減少するのでは?との心配や、大阪マラソンを日曜に控え、ホテルを取りにくかったなどの意見を耳にした。また私の大学同期の三橋善比古東京医大教授が10月18日にご逝去され、その告別式に参列した関係で初日の演題が聞けなかった。三橋教授の思い出はつきないが、また別の機会に述べたいと考えている。
 今回、岡本会頭が学会のキャッチコピーにされたのは「せやねん、やっぱり皮膚科学」〜「やっぱり皮膚科は面白い」とのことで、先生のライフワークであるサルコイドーシスに関連する特別講演やシンポジウムが初日に組まれていたが、残念ながら拝聴できなかった。また次代の皮膚科医を育成するための『試験に出るシリーズ』や『匠が語るシリーズ』の教育講演は大変好評だったようである。
私自身、最近興味を持っている食物アレルギーのシンポジウムは2日目の午前中に開催され、5人の演者が講演され、補助椅子も出るほどの盛況であった。ただ、お一人の講演時間がやや短く、討論時間が足りなかったのは残念であった。
特に、横浜市大の猪又直子先生の遅発型納豆アレルギーの原因アレルゲンがポリガンマグルタミン酸であり、患者の80%以上が湘南サーファーであったこと、その原因がクラゲ刺傷であり、納豆菌が産生するポリガンマグルタミン酸がクラゲの毒胞にも含まれていることから、落語の3題噺ではないが、湘南サーファーと納豆アレルギーの関連性を明らかにされたのは大きな進歩と思う。また誘発試験でも一回目が誘発されず、二回目も油断した頃にアナフィラキシー症状がでたことなどの苦労話もされ、臨床研究の重要性を再認識した。会場からも「グルタミン酸は問題ないか?」との質問がでたが、特に問題はなさそうであるとのコメントがあった。同じような研究者の熱意が原因アレルゲンを明らかにした点で、名古屋保健衛生大学の矢上先生の赤い食品のアナフィラキシーの原因物質としての貝殻虫由来のコチニール色素とその莢雑物や牛肉アレルギーから子持カレイ、セツキシマブアレルギーに関わるαGalアレルギーを明らかにされた島根大学の千貫先生方の努力には心より敬意を表するとともに、岡本会頭の意図にも充分答えられた講演であった。
 引き続き行われた特別講演2の辰巳治之教授の「インターネットの次代:「情報薬」によるFull Powered Medicineをめざしては情報薬という概念を提唱された辰巳先生の近未来の戦略的な日本の医療制度改革のお話であった。国民のビッグデータをどう活用し、どう日本の経済改革に反映させていくかというもので、非常に明快な語り口で、鋭く日本のインターネット医療の現状と将来を語って頂いた。私自身、昔、患者の健康データ管理が出来ていれば、少量の採血と問診結果を機械に入れればすぐに必要な薬剤が宅配便で届くような時代がくるかもしれないと思っていたが、手術支援ロボット・ダビンチの普及の速さを見ると、そのような日も近いのではと考えた。辰巳先生からは「どんどんスライド撮影して頂き、宣伝してください」と許可を得ているので、一部紹介いたします。
岡 本会頭、水野事務局長には学会が大成功に終わり、お祝いを申しあげるとともに、予測不可能なハプニングもありご苦労様でしたと言わせて頂きます。

大阪大学大学院医学系研究科教授 片山一朗
平成26年10月27日掲載

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