第44回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎総会学術大会
会長:相場節也 東北大学教授
会場:仙台国際センター
会期:2014年11月21-23日
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗
黄色から赤への紅葉が美しい杜の都、仙台で相場節也先生を会頭に第44回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎総会学術大会が開催され、参加した。青葉通りは杜の都仙台を象徴するケヤキ並木で有名であるが、愛宕・上杉通りから広瀬通りの銀杏並木も美しく、大阪の御堂筋のよりもきれいとの話も聞いた。
さて会頭の相場先生は私よりやや若手世代の先生で、遥か昔、私が大学院〜留学帰りの頃、免疫学会で素晴らしい演題を発表されていた事を思いだす。特
にハプテン刺激後、表皮ランゲルハンス細胞が活性化、大型化し、かつ所属リンパ節へ遊走する事で数が減少するという素晴らしいデータを発表された時は、その美しい蛍光顕微鏡写真の画像とともに大変感激したことを思い出す。現在、ランゲルハンス細胞が抗原提示というよりは、むしろ免疫抑制的に作用するというLangerin k/oマウスを用いた研究が主流になりつつあるが、FITCをハプテンとしたランゲルハンス細胞の所属リンパ節への遊走や相場先生のデータを考えると感作相で重要な抗原提示細胞としてもう一度再検討が必要な気がするのは私だけではないのかと思う。その後も、相場先生はコンスタントに素晴らしい仕事を発表され続けているが、最近は酸化ストレスに関わる研究や接触皮膚炎でSpongiosisが形成される機序を見事に証明された研究が記憶に新しい。
また痒疹や白斑、皮膚のバリア機能など私の研究分野と重なる部分も多く、本大会でも関連するシンポジウムがあり、白斑関連のシンポジウムの演者としても参加させて頂いた。この他、「好塩基球」をキーワードとするシンポジウムでは防衛医大の佐藤貴浩教授の痒疹の病態形成に関わる好塩基球の動態、「経皮感作」では成育医療センターの大矢幸弘先生がアトピー性皮膚炎発症のハイリスク群に対する早期介入によりアトピー性皮膚炎発症が抑制出来るという、いづれも私も関与してきた研究が大きく花開いた講演であった。雑誌賞では教室の荒瀬規子先生が「手湿疹患者の労働生産性、生活の質、医療費に関する検討」で雑誌論文賞を受賞された(写真)。忙しい基礎研究を行われている環境下で、地道な臨床研究を取り纏められ、素晴らしい成果となった。心より拍手を送りたい。
また日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会は2015年10月から一般社団法人への移行を視野に、現在事務手続きを進めており、新代議員(今後は社員)選挙などを終え、承認された。新体制となる来年10月からはより公的な視点からの学会運営と社会貢献が要求される。アレルギー学会で審議されている総合アレルギー医としての相互乗り入れ体制や、日本専門医認定制度機構が予定している新しい専門医制度での日本アレルギー学会の位置づけなど先行き不透明な制度改革が進んでおり、日本のアレルギー診療を我々アレルギーを専門とする皮膚科医がどのような研修制度、診療体制で担っていくかを論議していく必要があるかと考える。またここ数年問題となっている化粧品や美容品などによる健康被害に対して、診断、患者指導、治療など皮膚アレルギーを専門とする皮膚科医が果たして来た役割は大きく、その意味でも本学会の果たす役割は今後益々大きくなると考えられ、若い先生方の積極的な参画を改めてお願いしたい。相場先生が学会テーマとされた「アレルギー診療のマエストロをめざして」はまさに時宜を得たものと考える。
一般演題も近年、非常にレベルが高くなってきており、若い先生方の熱意が伝わってくる演題が多い。特に興味深く聞いた演題としては演題番号36のエステサロン用高周波温熱治療器施術者において、施術中に出現し、再現可能であった全身性蕁麻疹、37のスピール膏貼付にて蕁麻疹が誘発されたアスピリン不耐症の一例、69のアロマセラピストに生じた職業性接触皮膚炎、130のサラシミツロウによる接触皮膚炎、144の梅干しによる食物依存性運動誘発性アナフィラキシーの一例など。いづれもふだんあまり経験しないアレルゲンや病態であり、あらためてこのような学会に参加する意義を感じた。
会期中は好天に恵まれ、晩秋の東北地方を楽しまれた先生も多かったと思う。素晴らしい学会を企画提供頂いた相場教授、山崎研司事務局長、菊池克子実行委員長にあらためてお礼を申し上げるとともに、来年の新体制下での初めての大会を運営される島根大、森田栄伸教授、千貫祐子事務局長のプロモーションスライドを最後に仙台を後にした。
大阪大学大学院医学系研究科教授 片山一朗
平成26(2014)年12月9日掲載