教室関係コラム

2015.12.20

第40回日本研究皮膚科学会(JSID)

第40回日本研究皮膚科学会(JSID)
会長:岩月啓氏岡山大学皮膚科教授
会場:岡山コンベンションセンター
会期:2015年12月11日−13日v

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 第40回日本研究皮膚科学会(JSID)が岩月啓氏岡山大学教授を会頭として開催された。大会テーマは「Advance Dermatology through Science」とされ、1 minute presentationなど新しい試みがなされ、若い先生が発表できる機会を与えられた。この形式の発表は大変評判が良く来年以降も継続されるそうである。
 また海外からの多くのゲストが参加されていたが、最終日のIntractable skin diseasesの国際シンポジウムや汎太平洋皮膚バリア研究会(6th PAPSBRS)などうまく共催されたことの成果で岩月教授のアイデアがそこかしこに見られ、大成功の学会となった。私は11日朝にロンドン出張から帰国し、そのまま参加した関係でJSIDのセレモニー関連の講演は聞けなかったが、Kisaragi Awardを受賞された神戸大学皮膚科の福元先生のお仕事は多いに評価されていた。Tanioku Memorial LectureはIIDでSID理事長を務められたハーバード大学のThomas Kupper 教授が「T cells in barrier Tissue:new insights」というタイトルで講演された。皮膚に常在するメモリーT細胞TRMの講演だったそうで、皮膚というバリアの最前線に存在するメモリーT細胞による効率定な皮膚などバリア臓器での免疫システムのお話で感染症、腫瘍免疫、自己免疫疾患の発症など今後大きなブレークスルーの期待される分野で、我々の研究している皮膚細胞のステロイド産生と対をなす研究かと考える。

リヨン大学Jean-Francois Nicholas教授と座長の岩月教授。

 大阪大学医学部皮膚科学教室からは金田、室田、荒瀬、楊怜悧、越智、小野、加藤、楊飛、松村の各先生が演題を発表され、そのうち室田先生は「Artemin-administered mice develop thermohyperesthesia of skin via central sensitization to heat」、楊怜悧先生は「Disruption of the autophagy-lysosome pathway is involved in hypopigmented macules in patients with tuberoussclerosis complex」の演題でPlenaryに選ばれ、質疑応答も活発であった。

楊怜悧先生のあらたな領域の展開が期待された講演。海外の方からの質問などにも明確に答えられていた。

質問者が列を並べた室田先生の講演。

 越智先生、松村さんが発表されたサンダルウッドに関する研究は資生堂RCの伝田さんから、これから大いに発展が期待される素晴らしい研究とのコメントを頂いた。お二人の今後の研究の進展に期待したい。また楊飛先生の「Diminishing sweating in patients with tuberous sclerosis and the relationship to mTOR signaling pathway」は学会終了後、大阪大学でセミナーを行って頂いたリヨン大学皮膚科のJean-Francois Nicholas教授から大変面白い発展が期待される研究との評価を頂いた。荒瀬先生のP04-05 [C12-04] 「Presence of anti-β2GP1/HLA-DR complex autoantibodies in the non-APS patients with recurrent limb ulcerations」は自己抗体の新たな産生機序に関する研究で、多くの質問を受けられていたようである。また加藤先生が発表の機会を貰ったL-14 「 B-1 B cell progenitors transiently and partially express keratin 5 during differentiation in bone marrow」は小豆澤先生、花房先生とこの5〜6年検討されてきた研究であり、今東京医科歯科大学の講師として暫くの単身赴任で活躍中の花房先生が帰阪時の休日返上の実験でようやく納得できるデータが得られ、発表となった研究であり、指導された小豆澤宏明先生の地道な研究がさらに発展することを願う。今回は発表された先生方皆さん、それぞれの分野で大きな評価を得られたようで、引き続き大阪大学のパワーを発揮して頂きたい。ただ全体としては、私の理解不足が大きな要因ではあるが、今回口述講演を聞いた範囲では、次の研究をリードするようなInnovativeで胸がワクワクするようなブレークスルー研究は残念ながらあまりなかった。iPS細胞研究も皮膚科領域からは目立った研究はなかったが、研究全般が企業主体になり、特許などのからみで発表しにくい状況になりつつある現状を反映しているのかもしれない。実際我々の研究もそのような傾向になりつつあり、今後の課題かと考える。またFBなど見ると、きさらぎ塾の卒業生のパワーが感じられるようになってきたし、Kisaragi Awardの受賞研究のレベルは世界水準を超えるようになってきているかと考えるし、口述発表に選ばれる機会も多いようである。ただ口述発表に選ばれなかった研究にも素晴らしいものが多く見られ、理事や査読される先生の負担は増えるかとは思うが、是非ポスター賞などを学会中に発表し、きさらぎ塾生以外の方のMotivationをあげる努力もお願いしたい。

 懇親会は岩月先生のアイデアでライトアップされた岡山城に移動し、行われた。
海外の方も含め、お城で食事を楽しむ経験は初めてで、鎧、兜での写真撮影など皆さん、おおいに楽しんでおられた。
第41回大会は仙台にて相場節也東北大学教授を会頭として開催される予定である。学会終了後は岩月教授の親友のリヨン大学のNicholas教授をお迎えし、講演を頂いた。

懇親会場(岡山城)でのスナップ)。右からUCSFの内田先生、大分医大の波多野先生、リヨン大学のHaftek先生、資生堂RCの傳田先生、片山、T社の石田さん。アロマと皮膚機能の話で盛り上がりました。

Jean-Francois Nicholas教授によるセミナー(Pathopysiology of eczema (atopic and contact dermatitis)後のスナップ。

http://jsid40-okayama.jp/3_program/151201_JSID_program.pdf

2015年12月

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