教室関係コラム

2016.01.02

第39回皮膚・脈管膠原病研究会

第39回皮膚・脈管膠原病研究会             
会場:高知市文化プラザかるぽーと小ホール
会長:佐野栄紀 高知大学皮膚科教授
会期:2016/1.22-1.23

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一

佐野栄紀教授     中島英貴事務局長

 今年の第39回皮膚・脈管膠原病研究会は小玉肇高知医大(現高知大)名誉教授が平成12年に高知城を会場に開催されて以来16年ぶりの四国、高知開催であった。この会の前身はもともと故安田利顕東邦大名誉教授(元日本皮膚科学会理事長)が西山茂夫北里大学名誉教授を中心に当時、膠原病や血管炎、血管腫に興味を持たれる教授を取り纏められて設立され、第一回大会は皮膚脈管懇話会として西山先生を会長として、1976年1月18日に東京サンケイ会館で開催された。その後、休会があったそうであるが、1982年の第5回研究会からは西山先生が1989年まで会長を務められた。1987年からは、西岡清助教授(当時、現;東京医科歯科大学名誉教授)のお考えを取り入れられ「皮膚科で膠原病を考える会」を設立され、以後2日間の同時開催として運営されるようになり、その後は毎年六本木の国際文化会館で開催されたことは2012年のコラムにも書いた。2001年に2つの研究会が合同化し、現在の「皮膚脈管・膠原病研究会」に名称が改められた。本会は学会ではなく、研究会という自由な雰囲気の中で、毎回個々の発表演題について診断の根拠、病理組織の見方、そして解決されるべき問題点が時間の経つのを忘れて討論されたものである。最も遅く迄、議論が続いたのは1992年、奈良で開催された時で、終わったのが10時前で懇親会がどうなったのかの記憶は定かではない。ただ事務局長の宮川幸子先生(現奈良医大名誉教授)の顔が引きつっていた記憶は残っている。皮膚科学会をリードされる高名な先生方が前方の席を占められ、我々若いひよこの皮膚科医には大変刺激的な会であり、本当の意味での、皮膚科医教育がなされていたと思う。このような会が設立メンバーの後継者の教授を中心に、全国で持ち周りで開催されるようになり、より多くの若い先生が参加される時期があったが、ここ数年の専門医制度の大きな変革で基盤18学会の上に位置づけられる、臨床各科横断的で、より専門性の高い学会、研究会の存在意義や研修制度が議論されるようになり、本研究会の将来像も数年前から論議されるようになってきた。全国的な女性医師の増加の結果として、入院患者や重症患者を診るマンパワーの不足がより顕在化し、膠原病診療で最も重要な、皮膚症状の評価と吟味、検査異常を考えながら病理所見を読む研修が困難となりつつある現状、さらにバイオや分子標的薬の登場による診療領域の偏在化やジェネリックの推進による企業の市場原理などが進み、結果として皮膚科医の膠原病診療に果たすべき役割がどんどん縮小しているという意見を聞くことが多くなった。実際、皮膚脈管膠原病研究会に演題を発表される施設が年々限定されるようになり、何より次代を担うべき准教授、講師レベルの指導者層の参加も少なくなり、意見を言われる方も特定されるようになってきている。今年の高知の会でも参加者を見ると教授と発表する後期研修医の組合わせが目立った。このような現状を踏まえ、この数年間、膠原病を中心とした手作りの研究会の将来像やそのあり方を考え、設立の中心となられた西山茂夫先生や何人かの先生方のご意見を聞き、私が理事長職を拝命している皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会との合同化を進めることになった。今回の研究会でも多くの議論があったヒドロキシクロロキンの使用基準や適応、副作用などの問題点も学会が窓口になればHPなどを通じて、より速やかな情報の共有が可能となり、またチャペルヒルの血管炎の分類や強皮症、SLEなどの国際学会との連携が必要となるガイドラインなどの作成に関してもより責任のはっきりした対応が可能になるかと思う。私が関与しているアトピー性皮膚炎や白斑、痒みに関する研究会と国際的な関連学会、研究組織との対応に関しても同様で、時代の変化に合わせた組織の「scrap and build」が必要と考える。実際、チャペルヒル分類やSLE、強皮症の新しい診断基準の皮膚症状の評価や診断に、皮膚科医の意見がどの程度反映されているかは必ずしも明らかではなく、学会員が情報を共有し、議論を深めるのが何より重要で、それには責任のある代表者が複数で国際会議に参加することが必須と考える。今回の研究会でもIgA血管炎の位置づけや診断、SLEの皮膚症状(特にLE profundus, Lupus panniculitis、Lupus tumidus)の今日的な意義とLupusと名前を付ける妥当性、Atrophoderma Pasini PieriniやMorphea profunda , Eosinophilic fascitisなどと診断され、発表された疾患と強皮症の組織反応との異同や解釈などが論議されたが、それに答えられるだけの討論には残念ながら至らなかった。今後、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会への合同化が進められるのであれば、毎年膠原病に特化したテーマでのワークショプやサテライトセッションなどの開催、ホームページの充実など学会の中で皮膚脈管膠原研究会としての伝統と考え方が継承されていけるような組織作りが必要で、代表世話人としてさらに多くの方から意見を聞き、より時代にあった組織にできればと考える。私が考えている一つの案として、合同化後は現在日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会内にある分化会(接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、薬疹、蕁麻疹、膠原病)の委員長・責任者の主導で毎年それぞれの分科会が企画したテーマ別ワークショップなど本来の学会としての双方向性の議論が可能な場を提供し、その中で「今解決すべき問題点、将来にわたり検討すべき問題点」などを集約し、会頭、学術委員会と共同してより会員に有益な学会プログラムを理事会に提案していくのが良いと考えている。10年以上前に古川教授と松永教授のご尽力で合同化した接触皮膚炎学会は接触皮膚炎ガイドラインの策定、パッチテストの教育・普及やアレルゲンの登録、皮膚被害を生じた製品のリコール制度、世界の研究者との連携など合同化を契機として多くの成果を上げられてきた。膠原病に関しても多くの先生方の叡智を集め、若い先生方の参加が増え、生産的で将来に繋がる魅力的な会にしたいと考える。ただ「皮膚科で膠原病を考える会」の理念を継承し、膠原病診療に情熱をかける先生方が集えるような「皮膚脈管・膠原病学会」の選択肢は残しておきたい。最終日夕方からは西日本が大荒れの天気になるとの予報であったが、会期中そして帰途、特に交通機関のトラブルはなく、39回大会を無事、大成功に終えられた佐野教授、中島事務局長、そして医局の皆様に厚くお礼を申し上げる。

2016年1月

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