教室関係コラム

2016.07.01

第48回日本結合織学会

第48回日本結合織学会
平成28年6月24日-25日
会頭:宇谷厚志(長崎大学皮膚科教授)
会場:良順会館(長崎)

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

昨年の第67回日本皮膚科学会西部支部総会を会頭として無事終えられた、宇谷厚志長崎大学皮膚科教授が開催された第48回日本結合織学会に参加した。本学会は私が人間的にも、皮膚科医としても心より尊敬する佐野榮春大阪大学皮膚科名誉教授や新海浤千葉大皮膚科名誉教授が関与された学会で、昨年からはマトリックス研究会と発展的統合化されたそうである。(Japanese society for matrix biology and medicine)。私も日本結合織学会の評議員だが、ここ数年以上参加をしていない。ただ、昨年ソウルで開催されたSister society?の9th International Conference on Proteoglycans and 10th Pan-Pacific Connective Tissue Societies Symposiumに招待され、教室の先生方と参加したが、いづれも学会の合同化と皮膚科医の参加が非常に少なくなっているのが印象に残った。私が理事、世話人を務める日本色素細胞学会や日本発汗学会、痒み研究会でも皮膚科の参加者、特に若い研究者が減少し、学会の維持、生き残りに皆さん尽力されているが、なかなか難しい現状である。今回の学会では若い先生方を惹き付けるためのOne minute presentationや若手フォーラム、マイスターレクチャーなどが企画されており、長崎大学皮膚科の若手の頑張りが眼についた。宇谷先生自身、会頭挨拶で以下のように述べられている。
「私は1984年頃大学院時代にマトリックス研究会(コラーゲン研究会)の阿蘇山での会に参加させて頂いたのが初めてでした。その後は、臨床病院に勤務し そのまま留学したため、10年近くブランクが出来てしまいました。帰国後千葉大学皮膚科(新海先生)に就職した1990年代後半からは、毎年結合組織学会 に参加させて頂いていますが、基礎の先生に恥ずかしくない内容を発表したい気持ちで参加してきました。私には専門科の先生と同じレベルで discussionができることは楽しさに、また全く思いつかない側面からの指摘は心地よい良い刺激となっています。このような臨床と基礎の研究者が集うハイブリッド型学会は皮膚科でも数えるほどになりましたが、その意義は非常に大きいです。日頃の解けない疑問を専門科の先生、実験に詳しそうな大学院生に聞く良い機会と思います。以下省略」。是非皮膚科の若い先生方も、宇谷先生の考えられるコンセプトをもう一度考え、研究を行って頂きたいと思う。教室からは院生の小紫先生がモデルマウスを用いた間葉系骨髄幹細胞による強皮症の治療の試みを発表した。あとでF教授から、臨床応用が期待できる研究で、その成果が楽しみとのコメントを頂いた。小紫先生のさらなる頑張りを期待している。

口演する小紫先生

私自身、今回の学会では京都大学ウイルス研の影山龍一郎教授の特別講演 [Dynamic contro of neural stem cell]を拝聴できたことが大きな収穫であった。影山先生は宇谷教授の京大の同期との事で、Optogenetics の手法を用いて神経幹細胞からのNeuron, Oligodendrocyte, Astrocyteなどへの分化が青色光によるOscillationにより調節しうるという研究で、Optogeneticsの進歩が良く理解できた。このほか基礎医学の領域からは興味深そうな演題が多く出題されていたが、研究手法や研究目的が臨床と結びつけるにはややハードルが高かった。宇谷先生が昨年の西部支部学術大会の挨拶でも述べられていた「大学は研究する場」と認知されてはいますが、最近では研究は専門医の”次のレベル”という考え方が多くなってきているようです。時間的、物理的な制約 を乗り越え、大学皮膚科教室で現在行われている研究活動を発表していただき、本質は何かを考える「好奇心」があふれる皮膚科医師の育成の契機になれば嬉しく思います。』という教育方針は私も多いに賛同するところであり、長崎大学皮膚科で若い元気な先生方が育っている事や育児にある程度目処がついたママさん皮膚科医が大学院に進学、あるいは基礎研究を開始されている姿を見て大きな感銘を受けたと同時に、最近の研究の進歩について行けなくなりつつある自分自身への大きな叱咤激励となった。
最後に過去の日本結合織学会の会頭(pdf)を記録しておく。

平成28年7月掲載
  • 社団法人日本皮膚科学会
  • 日本皮膚科学会中部支部
  • 日本皮膚科学会大阪地方会