教室関係コラム

2017.12.19

第47回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会  第41回皮膚脈管・膠原病研究会

第47回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会総会学術大会
第41回皮膚脈管・膠原病研究会
会長:金倉拓郎 鹿児島大学教授
会場:かごしま県民交流会館
会期:2017年12月8-10日

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 金蔵会頭の鹿児島大学学会シンボルとして有名になった薩摩ブタの可愛いイラスト、「セイブー」の名前の由来の説明から学会が開催された。今回、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会と皮膚脈管膠原病研究会の合同化に伴い、長い学術大会の名前になったが、来年からは日本皮膚免疫アレルギー学会という、シンプルな学会名になる。また学会が2.5日になり接触皮膚炎、蕁麻疹、薬疹などのアレルギー疾患と膠原病、血管炎などが別会場で、平行して行われ、メイン会場ではシンポジウムや特別講演が、また別会場でハンズオンセミナーが時間をズラして上手くプログラム編成されていた。特に、今回は例年75題前後の演題が2日間でに亘って行われていた膠原病、血管炎関連演題が、どの程度集まるか不安だったが、最終的に40題近い演題が集まり、金蔵会頭も安堵されていたようである。ただ演題が皮膚筋炎関連が多く、本来の多様な臨床像を提呈する膠原病や血管炎の演題にやや偏りが見られ、一部議論が盛り上がらなかった点や、血管炎と膠原病関連演題が一部同じ時間帯に集まっていた点はまた来年以降検討して頂ければと考える。

 今回の企画で特筆すべきはシンポジウム「脱毛症」で、脱毛症を自己免疫疾患の観点からシンポジウムが組まれたのは恐らく、初めてかと思われる。どの発表も興味深いタイトルだったが、浜松医大の伊藤先生のReviewで円形脱毛症では毛包バルジ領域のCD200の発現がIFNγで消失することを述べられた。CD8陽性細胞による直接的な細胞傷害性で脱毛が生じると考えていたので質問したが、討論に参加された大山先生のコメントではまだ、その意義は不明とのことであった。加齢性の毛包の萎縮に、好中球エラスターゼによる17型コラーゲンの消失が毛包ステムセルの排除に関与するとの報告が西村栄美先生の研究で紹介されているが、ステムセルニッチの構成マトリックスを考える上で重要かと考える。また鹿児島大学の内田先生が円形脱毛症におけるIFNγ産生細胞がγδ細胞である可能性を報告された。彼は今回の特別講演で来日されたマンチェスター大学のRalf Paus教授の教室に留学されているが、この分野の研究が脱毛症と自己免疫の接点を考える上で重要な研究になるかと思う。一般演題では一型アレルギーの研究で有名な西宮市で開業されている原田晋先生によるゴマのアレルギーが興味深かった。日常生活でなじみの食材であるが一型アレルギーの報告は殆どないそうで、今後の解析が待たれる。大阪大学からは室田先生、中川先生、壽先生、越智先生、林先生、外村先生、田中先生、清水先生が出席、発表したがいづれの演題も興味深く、たくさんの質問があった(演題名はPDF参照)。
 今回は日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会と皮膚脈管膠原病研究会の合同化に伴い、討論の盛り上がりにやや欠け、元の皮膚脈管膠原病研究会の復活を考えてはという意見も頂いた。現在、日本皮膚免疫アレルギー学会には接触皮膚炎、薬疹、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、職業アレルギー、あらたに加わった膠原病などのアドホック委員会があり、国際学会や皮膚科学会との窓口になっている。今後、より深い討論などが必要になるときには分科会のような形式で研究会を復活させるなどの議論がでてくるかと思う。皮膚脈管・膠原病研究会は出席者数の減少や、議論が少なくなったこと、開催校の負担増、海外との連絡、治験など色々な問題が起こり合同化となったが、逆に一時期、出席者の減少でその存続が危ぶまれたアトピー性皮膚炎治療研究会は現在、新任教授の参加が増え、また活性化していくことが期待されている。時代の変化に伴い、柔軟に対応して行くことが必要と考える。重要な点は本当にその領域の臨床や研究が好きな人が参加して、議論ができ、若い皮膚科医が積極的に演題を出し、討論に参加出来ることかと考える。新理事長には浜松医大の戸倉教授が選任され、来年の48回大会は奈良医大の浅田教授が会頭を務められる。新しく生まれ変わる日本皮膚免疫アレルギー学会が大きく発展していくことを願う次第である。

日程表(PDF)

大阪大学皮膚科教授 片山一朗
平成29年12月19日

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