教室関係コラム

2006.11.01

研究のすすめ

研究のすすめ

大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗

 11月となり年報作成の時期となりました。 さて今年2007年は昨年の寄付講座開設引き続き、4月に佐野榮紀先生が高知大学、5月に浅田秀夫先生が奈良医大の教授に就任されました。お二人の先生は長年阪大ですばらしい業績を挙げられ、あらたな環境で素晴らしい教室を作り、次の世代の優秀な皮膚科医を育ててくれるものと期待しております。同門の先生方もご支援宜しくお願いいたします。また5月には樽谷勝仁先生が兵庫医大、7月には山口祐二先生が名古屋市大にそれぞれ栄転されました。それぞれ阪大とも縁のある大学であり、お二人の先生にも是非ご自身の研究をさら発展させ、皮膚科医としてのフィールドを大きくして、また阪大戻って来ていただきたいと願います。これらの先生とは入れ替わりになりますが、5月に種村君が悪性黒色腫の基礎研究をテーマに米国から、10月には小豆沢宏明君が調節性T細胞の研究をテーマにドイツから無事留学を終えて帰国されました。是非留学の成果を阪大で発展させていただきたいと思います。
 今年の9月号の日本皮膚科学会雑誌に京都大学の宮地良樹教授が「病院勤務医の危機・燃え尽きないために」という時宜を得た論文を発表されました。
勤務医の問題と共に臨床教室での基礎研究者も全国の大学レベルで減少しており、発表される論文も減少傾向にあることが報道されております。皮膚科学が臨床医学である以上、その中心が患者によりよい医療を提供することであることは言うまでもありませんが、それを支えるのは臨床研究でありまた臨床に基づいた基礎研究です。今、国際皮膚科学会が開催されているベノスアイレでこの小文を書いていますが、学会場は化粧品関連のブースに人だかりが目立つ反面、膠原病、腫瘍、再生医学などの分野にアジア系や中南米の若い先生方がたくさん参加しており、素晴らしい発表をされています。逆にアメリカや韓国などでは大学自体が美容皮膚科など診療報酬が比較的高く、医療保険に影響を受けにくい診療分野にシフトしつつあるようで、重症、難治性の皮膚疾患を診ない傾向に移行しており、結果として大学や医療全体の中での皮膚科の存在価値の低下、臨床医の基礎研究への参入減少、研究費獲得の低下による大学内での皮膚科への予算削減などが大きな問題となっていることを聞きました。わが国でも今後専門医としての診療、研究を行って行くためには基本診療科の専門医修得に加え、さらにサブスペシャリテイとしての専門医と博士号の修得が科せられることが喧伝されております。是非目先の損得で将来を決めるのでなく、自分自身の皮膚科学を創って行くためにも、大学や基幹病院で多くの重症、難治性の患者さんを診療し、その病態を理解する中で、新しい治療法の開発や創薬を目指して、一時期研究に没頭する時間を作って頂きたいと思います。

2006年

  • 社団法人日本皮膚科学会
  • 日本皮膚科学会中部支部
  • 日本皮膚科学会大阪地方会