教室関係コラム

2011.02.01

次世代の皮膚科医をどう育てるか?

次世代の皮膚科医をどう育てるか?

大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗

 皮膚科医になり35年を迎える。昨年の東北大震災以降、医療のあり方が問われ、災害時そして現代医療の中での皮膚科医の役割が見直されている。被災地で実際に患者の診療に携わられた先生のお話を聞いたが、初期には外傷などの応急手当などの知識が要求され、少し安定した時期には皮膚の感染症、褥瘡・潰瘍の管理、アトピー性皮膚炎などの慢性疾患の治療、そして入浴が出来ない事によるカユミのコントロールなどが必要とされたそうである。薬剤や医療機器が不足する中、最善の努力を果たされ先生方には心から敬意を表するとともにあらためて現代医療の中で皮膚科医が果たすべき役割が明らかになったと考える。皮膚科診療の最も大きな特徴は皮膚科医自身が長い経験の中で身に付けた皮膚科医の眼である。視診だけで有る程度の診断を行い、血算、検尿などの簡単な臨床検査や皮膚症状以外の粘膜や爪甲の変化や詳細な病歴の聴取により正確な診断と適切な治療が選択出来る事である。このような低コスト医療が一時期医療効率を厳しく求められる中、採算性の面から厳しく問われ、実際定員の削減など大きな打撃を受けた施設も多いと思う。しかし皮膚科の外来を受診される患者さんは皮膚病以外にも多くの疾患を持たれている方も多い。主訴以外の症候から全身疾患を見つけることも多く,皮膚科医の醍醐味である。被災医療とも関連するが、多くの医師との連携が必要な疾患をもつ患者の医療で皮膚科医が果たす役割は大きく、また時にチーム医療のリーダーとしての責務を果たす場合も多い。かつて長崎大学に勤務をしていた時に、ある離島医療の病院長から皮膚科医の派遣を依頼されたことがある。その時にまだ皮膚科医としての経験が2〜3年しかないが、最も信頼できる先生(Y医師、その後M女性医師)の方に一人医長で勤務して頂いた事がある。周囲に皮膚科医が全くおらず、また充分な診療機器もなかった病院で、多くの皮膚疾患患者を診療するのみならず、患者の合併症を見いだし、他科に紹介することで病院の患者受診数を一気に増加させ、病院長から多いに感謝されたことがある。彼らの尊敬すべき点は自分が紹介した患者の検査や手術にも可能な限り参加し,皮膚科医としての意見も言われていたことで、あとから院長から聞いた話しでは、Y医師は脳外科のオペにもネーベンとして参加し、大学に戻る頃には素晴らしい皮膚科医に成長されていた。本来このような医師を育成することを目的としたスーパーローテートではあるが、残念ながら彼らのような医師は減少しているようである。先の震災での皮膚医の役割を考えた時、彼らのような医師を育成していくことが我々に要求されているのではないかとあらためて考えてる。

2011年

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