教室関係コラム

2012.09.04

ロンドンオリンピック2012

ロンドンオリンピック2012

皮膚科教授 片山一朗

 7月27日に開幕した第30回ロンドンオリンピックは日本が金メダルこそ7個と少なかったが過去最高の38個のメダルを獲得し、8月12日に閉会した。大会中何度か明け方迄テレビ中継を観戦し、寝不足が続いた先生も多かったと思う。アメリカや中国などの圧倒的な強さの中でやはり最も印象に残ったのはなでしこジャパンや女子バレー、レスリング、水泳など女性選手の活躍と男子フェンシングで最後の1秒でドイツに逆転した太田雄貴選手の素晴らしい試合だったかと思う。なでしこの佐々木監督やiPADを駆使して選手を指導した真鍋監督など,女性医師の占める位置が高い全国の皮膚科教授にも、その指導哲学や手法など、おおいに参考になったかと思う。また北島康介の前コーチで,今回寺川綾をはじめとする日本水泳選手団のコーチを務めた平井伯昌さんの「勝ち続けることでアスリートは尊敬される。楽な練習なんてない。克己心を身につけるための練習がきついのはあたりまえ。康介には世界で多くの人とふれあって欲しい。指導者がいなくてもセルフマネージメントできる選手を育てることがコーチとしての目標だ。」(週間朝日8月10日号)の言葉も印象に残った。
 阪大の皮膚科でも、教官の先生方が若い研修医や大学院生を指導してくれているが、同じ気持ちで次ぎの時代の皮膚科医を育てて頂きたい。またオリンピックでの女性選手の活躍と同様、今年から来年にかけて4人のママさん皮膚科医が相次いで海外に行かれるが、是非見聞を拡げ、帰国後はまた皮膚科医として活躍して頂きたい。
 さてオリンピック終了と相前後して北方領土、竹島、尖閣諸島などの領有権を巡る問題が一気に噴出した。オリンピックが部族間の戦争が続く古代ギリシャでつかの間の休戦を目的として開催されたことが思い出されるが、現代に生きる我々にも現実の厳しさを思い知らされる。世界は今Overconnectedとも言われるくらいインターネットやFacebookなどで結ばれ、多くの情報が手に入る時代になったが、その中で実態のない経済活動が多くの弊害を生みだし、リーマンショックやギリシャ危機が世界を襲い、そして日本の国力低下が現実のものになりつつある。世界がデフレスパイラルに陥った時、現実の世界はいかに苛酷であるかをあらためて再認識するが、今後我々はどのように生きて行けば良いのかそれぞれが考えていかざるをえない時代になっている(アエラ 2012.9.10  No37.内田樹 大市民講座 「アメリカ抜きはありえない」)。
 同じ問題は皮膚科という小さな社会に生きる我々皮膚科医にも当てはまる。日本の大学は明治時代の大学設置、敗戦による新制大学の誕生に引き続き、20世紀後半に始まった大学院改革に大きく振り回されている。大学も従来の日本型相互扶助型(組織依存型)からアメリカ型個人主義に近い組織運営に移行しつつある。今後は組織防衛の意味からも個人が個々に独立しながら伝統の継承と組織維持を重視するユダヤ人型の考え方に日本的な武士道精神を付加したあらたな組織の構築が必要ではないかと考えている。

2012年9月4日

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