教室関係コラム

2013.08.26

第8回箱根カンファレンス(兵庫県淡路島)

第8回箱根カンファレンス 2013. 8.24-25
淡路島 夢舞台

大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗

 この研究会は皮膚科の若手の免疫・アレルギー研究者を育成する目的で、1999年に、西岡清先生(当時東京医科歯科大学皮膚科教授)と故玉置邦彦先生(当時東京大学皮膚科教授)を代表世話人として年1回開催されてきた。手元にある第一回のプログラム記録集に書かれた西岡先生、玉置先生の挨拶を転載させて頂くが、第1回と第2回は西伊豆の大仁で、第3回からは箱根に場所を変えて6回まで開催された。その後2005年からは現在の箱根カンファレンス」と名前が変更され、島田眞路先生(山梨大学皮膚科教授)、片山一朗(大阪大学皮膚科教授)、古江増隆先生(九州大学皮膚科教授)を代表世話人として千葉の上総アカデミアを会場として開催されてきた。今年の第8回大会で一応この会は終了するとのことで今回当番幹事を務めた私の希望で淡路島・夢舞台で開催させて頂き、来年からは新しい代表世話人の先生方を中心にRenewalした会になる予定である。西岡先生が第一回研究会記録集の挨拶に書かれているように、この会は皮膚科の若手研究者がネクタイを外し、本音で皮膚科学の色々な問題点を語り合うことを目的とし、一演題1時間から1時間30分(特別講演)の発表を5題拝聴し、発表の途中でもどんどん質問し、会の終了後は懇親会、その後は会員の部屋で遅くまで、議論が続いた。
 このような会は当時なく、毎年の研究会に参加するのが楽しみで、多くの若い先生方や基礎医学の高名な先生方と知り合いになることができたこと、この会から多くの教授が誕生したこともこの会の大きな功績かと考える。このようなコンセプトの会の開催は今後難しいかもしれないが、是非来年からの新たな会にこの伝統を残して頂きたい。
 さて演題であるが、先ず大阪大学の環境・生体機能学講座教授の竹田潤二先生に「表現型を基盤とした遺伝学解析」というタイトルで講演頂いた。竹田先生は高知大学の佐野栄紀教授との共同研究でSTAT3を始めとする様々な表皮特異的な遺伝子改変マウスを作成されてきた世界的に大変高名な先生である。今回はトランスポゾンシステムを用いて特定の遺伝子をランダムに消去することで生じる遺伝子異常のフェノタイプ解析を中心にお話しされた。大変難しい話で半分も理解することが出来なかったが、今iPS細胞を用いた研究で何が問題か、今後どういう風に発展していくかを熱く語って頂いた。翌日の会員講演で話題提供された東京医科歯科大の井川先生とも、iPS細胞からケラチノサイトを作成する過程で、ガン遺伝子を含む山中ファクターをどう除くかを共同研究されている。Bloom遺伝子を用いたpiggybackトランスポゾンシステムを用いることで山中ファクターを除いたiPS細胞から分化させたヒトケラチノサイトはより正常の細胞に近く、臨床応用に向け有用であることが井川先生から示された。皮膚疾患患者から誘導したケラチノサイトを用いることで、様々な疾患の病態解明や有効な治療法の検討、さらに変異遺伝子や欠損遺伝子を修正、導入した細胞から皮膚組織を作成ないし、幹細胞の導入などが可能となることが予測され、今後爆発的にその研究が進むことが期待されている。ただ皮膚科領域からの若手のこの分野への参入はまだ少ないようで、今回の研究成果がその端緒になることを願っている。
 お二人目の大阪大学、免疫フロンティア研究センター免疫化学部門教授の荒瀬尚からは「ペア型レセプターと自己免疫疾患」というタイトルで講演頂いた。荒瀬教授は単純ヘルペスウイルスがPILRαと呼ばれるペア型レセプターを介してヒトマクロファージに感染する機構をCell誌に発表された、やはり世界的に高名な先生である。今回の講演では細胞質のunfolding proteinをClass 2に乗せて膜面に発現させると効率的な病原性の自己抗体が誘導される可能性を関節リウマチ(リウマチ因子)、橋本病(抗サイログロブリン抗体)、抗リン脂質抗体症候群をモデルとして講演され、多くの白熱した議論が飛び交った。我々の研究室でも奥様の荒瀬規子先生を中心に白斑などの自己抗体の検討を共同研究させて頂いている。翌日は先に述べた井川先生からヒトiPS由来ケラチノサイトのお話しを、東北大学皮膚科の山崎研司先生からは「自然免疫機構の表皮細胞への影響」というタイトルで、主として抗菌ペプチドに関わる研究の流れと抗菌ペプチドで誘導されるIL36の最新の研究成果をお話し頂いた。また熊本大学の神仁正寿先生には「microRNAと免疫が関わる皮膚疾患」というタイトルでSJS・TENの発症に関わるmicroRNA,強皮症でのmicroRNAの動態をお話し頂いた。今回で泊まり込みでの研究会は最後となるが、日本研究皮膚科学会のきさらぎ塾などにそのコンセプトが引き継がれることを願っている。

※参考
第一回のプログラム記録集(pdf)

大阪大学大学院情報統合医学皮膚科 片山一朗
平成25年8月26日掲載

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