第112回日本皮膚科学会総会
会頭 川島 眞 東京女子医科大学教授
会場 パシフィコ横浜
会期 2013年6月14日~16日
テーマ -いま望まれる皮膚科心療-
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
日本皮膚科学会総会に参加しました。会場はパシフィコ横浜です。ここは私の大好きな場所の一つで、サイエンスの面白さを教えてくれた場所です。ここでは本当に多くの方と交流することができました。総会の魅力の一つで、私にとって大きな収穫となりした。
初日、私は汗に関する教育講演の機会をいただいていました。同セッションで愛知医大生理学名誉教授の菅屋先生の話を伺いました。皮膚科医でありながら汗と汗腺の基本性能に関してまだまだ知らないことの多いことに気づき、大変勉強になりました。皮膚の基本性能を知らないと病気の事は分からないですから・・反省。
シャリテ大学のMaurer先生からは 最新の蕁麻疹治療について伺いました。オマリズマブに関する話題は大変興味深かったのですが、寒冷蕁麻疹になぜ効くのか検討の余地はありそうです。
土肥記念国際交換講座はDubertert先生によるThe patient based medicine: A medical revolutionという前衛的なタイトルの講演でした。「アドヒアランスが悪い」などという言葉を耳にします。しかし治療へのアドヒアランスは担当医の技量次第であるという言葉から講演ははじまりました。これまで治療介入方法はevidence based medicineといった概念で構築されてきましたが、患者のQOLをさらに高めるためにはPatient based medicineという考えを取り入れる必要があるようです。つまり診察で医師からの質問で患者のニーズをどうつかむかが重要なのだそうで、実際に①問診②説明③ネゴシエーション④処方という診察ステップを具体的に乾癬の例をもとに示されました。説明では先生が実際に診療室で患者説明につかったとされる手描きのイラストを紹介されました。私も絵を描いて病気の説明をすることが多いのですが、先生のはまさにシンプルで分かりやすいものでした。病気を簡潔にイメージするのは病気をよく理解していないと難しいものです。私も精進していきたいと思いました。
私は昨年から学生講義で水疱症も担当することになっており、知識のアップデートのため積極的に水疱症のセッションに参加しています。これは以前から言われていることですが、現在の表皮細胞接着メカニズムに関する記述はin vitroとin vivoの現象が混在しています。さすがに講師の先生はそこを見事に明確に示され、疾患モデルとイメージングによる最近の研究の成果が水疱症の病態解明に大きく貢献しているのだと感銘を受けました。さらに現時点での検査方法によるBP180抗体陰性という結果にこれまで振り回されてきましたが、全長BP180抗体検査が日常診療に反映できる日は近そうですね。
学会最終日に私はランチョンセミナーの機会もいただいておりました。アトピー性皮膚炎に対する汗と温度の指導箋についてのセミナーでしたが800名もの方を前に話をさせていただくのは恐らく始めての体験でした。汗や温度に関する指導を日常診療で行うだけで改善する方もいらっしゃいますので、一つでも先生方の診療の参考になる情報が提供できていればと願う次第です。
最後に、とにかく本会には様々な心配りと興味深い企画がちりばめられていました。会頭の川島先生、事務局長の石黒先生、そして教室の皆様のご尽力に敬服するばかりです。
会員懇親会のあとは大阪大学玉井先生、弘前大学中野先生の皆様とご一緒させていただきました。先生方の大人な素養とその背後に広がる優しい横浜の夜景に心洗われる思いでした。横浜、ステキです。
平成25(2013)年6月24日掲載