教室関係コラム

2014.09.22

第29回日本乾癬学会(高知)

第29回日本乾癬学会
会頭:佐野栄紀高知大教授
会期:平成26年9月19日(金)〜20日(土)
会場:高知市文化プラザ(高知市)

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

  • 吉川邦彦阪大名誉教授デザインのシンボルマーク

 同門の佐野栄紀第先生が会頭をつとめられた29回日本乾癬学会に参加した。阪大皮膚科からは林先生、山岡先生が口演し、谷、越智先生、関連施設からは日生病院の東山先生、岡田先生、吉良先生、樽谷先生など乾癬を専門とされる先生が参加されていた。大会のテーマは「Psoriasis more than skin deep」(PMSD)で、systemic inflammatory disease としての新しい乾癬の概念を全面に打ち出された学会を象徴するものであった。

(佐野先生の会頭挨拶)

初日の開会前、フランク・シナトラの歌う「I’ve got you under my skin」が
A会場の扉を通して聞こえてきた。会場に入るとスライドは高知の名所を紹介されており、会期中を通して、このメロディーがリフレインされた。(動画はこちら

 今大会の特徴は「Psoriasis more than skin deep」(PMSD)と銘打ったPMSDシンポジウムが2日間にわたり4つ(基礎研究、遺伝子、顆粒吸着療法、本音トーク)組まれていた事と、患者教育、患者会とのジョイントシンポジウムなど、より患者さんとの連携を深めるようなプログラムが組まれていた事で、最終日にはさらに会頭と患者さんたちが親睦を深められたそうである。本当に佐野先生の気配りと素晴らしいアイデアが随所に見られた素晴らしい学会であった。
私自身も可能な限り演題を拝聴し、記憶に残ったものを記録しておく。
最初のPMSDシンポで講演された住友病院院長の松澤佑次先生はメタボリックシンドロームの名付け親で、佐野先生も米国から帰国後、しばらく住友病院に勤務され、ご指導を受けられたとの事である。我々の教室でも皮膚の脂肪細胞でのサイトカイン産生を検討しているが、内臓脂肪細胞との本質的な差があるのか、Massとしての量の差なのか興味がある。再生医療にも内臓、皮下脂肪細胞が使用される時代であり、さらなる検討を期待したい。

 我々の教室から、山岡先生がアバタセプトにより誘発された乾癬様皮疹を発表したが、関連してローザンヌ大学のMichel Gilliet先生から興味深い講演があった。 乾癬表皮で発現が亢進している抗菌ペププチドが自己DNAと複合体を作り、Plasmacytoid dendritic cellを活性化する際、Toll like receptor 7を介しIFNαなどを産生する。そして抗TNFαの存在下でその反応がさらに増幅する可能性やPradoxical reaction の際,このPlasmacytoid dendritic cellが病変部で増加しているなどきわめて興味深い内容であった。(Seminars in Immunopathology 2014. Immune sensing of nucleic acids in inflammatory skin diseases Olivier Demaria, Jeremy Di Domizio, Michel Gilliet. ) TLR7に関しては高知大の佐野先生らもそのリガンド刺激で乾癬様の病変が誘発されるのみでなく、SLEに似た病変が誘発される事を報告されており、生物製剤の使用や自然免疫の調節剤の使用に一石を投じる内容であった。Yokogawa M, Takaishi M, Nakajima K, Kamijima R, Fujimoto C, Kataoka S, Terada Y, Sano S.
Arthritis Rheumatol. 2014 Mar;66(3):694-706.

 今回は一般演題が殆ど生物製剤一色の感があったが、PMSD4ではバイオ製剤で制御が困難な症例にMTXや従来の治療を再評価、再使用することの意義に関しても講演があった。ただパネラーからの一方通行の話で消化不良の感は否めなかったが、最後に佐野先生がバイオ無効な症例の皮膚の下にある全身疾患の治療や患者指導を行う事の重要性を再度強調されたことは大きなインパクトを与えられたと思う。もう一つのトピックスであった、関節症性乾癬(PsA)に関しては、米国のMease教授からの詳細な講演があり、私が座長を努めたが、彼自身リウマチ医で、今後皮膚科医との連携の重要性を示唆されていた。教室の林先生も早期診断における関節エコーの有用性を講演されたが、関節リウマチ同様
早期診断、早期バイオ導入でどの程度重症化を押さえる事が可能か今後の検討が必要と考える。また最近保険適応となった顆粒球吸着療法に関しては、導入後炎症性サイトカインの抑制のみでなく、創傷治癒に関与するようなProgenitor cellが誘導される可能性が報告され、壊疽性膿皮症などへの応用も期待される。

 今回の学会はすべての意味で素晴らしかったが、学会終了後訪れた、牧野富太郎を記念する牧野植物園も日本には珍しい植物を展示しており、充分楽しむ事ができた。はりまや橋でかんざしを買った坊さんは隣接する31番札所の竹林寺の住職と帰りのタクシーの運転手から聞いた。本大会を開催された会長の佐野栄紀教授、事務局長の中島英貴先生や高知大学医学部皮膚科学教室の皆様に感謝いたします。

大阪大学大学院情報統合医学皮膚科 
片山一朗 平成26年9月22日掲載

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