教室関係コラム

2014.09.30

10周年を迎えて

10周年を迎えて

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

平成26年7月吉日

ご挨拶

 私が2004年、大阪大学医学部に着任して今年の3月1日で10年が経過し、11年目を迎えることができました。6月21日、同門会で祝賀会を開いていただきました。関係者の皆様には、この場をかりて御礼申し上げます。
 着任前に久しぶりに訪れた皮膚科学教室は中之島当時の医局、研究室に比較し、広く、機能的に整理されていましたが、佐野栄紀先生(現高知大学教授)などが留学されていたこともあり、人の気配があまり感じられませんでした。その中で、何回か引き継ぎに訪れた際にいつも研究室におられたのは金田真理先生(現講師)だけで、先生のライフワークである結節性硬化症のお話を熱く語っていただいた事を良く覚えております。
 着任した2004年はスーパーローテートシステムが開始された年であり、新卒の先生のいない教室作りを開始することを余儀なくされました。また現在でもその解決策が見えてこない、女性医師の復帰支援や中堅医師の離職、大学院進学や海外留学希望者の減少が顕在化してきた時期でした。そのような中、長崎大学から大阪に来て頂いた室田浩之先生、金田先生、住友病院を経て帰局された佐野先生を中心に多くの医局員や秘書さん、技術員のかたがたの献身的なサポートで、より活力のある、そして多くの情報を世界に発信できる皮膚科学教室に育ってきました(活動内容は大阪大学皮膚科ホームページをご覧ください)。特に金田先生は全国の大学に勤務する女性皮膚科医(あえて言わせていただきます)のロールモデルとして、現在でも一番早く出勤し、最後に鍵をかけて帰られる生活を続けておられ、大阪大皮膚科がここまで成長してきたのは、本当に先生のご尽力のおかげと感謝しております。
 私自身、良くコラムなどに「信頼と品位のある人と人との繋がりが何より大事」と繰り返しいってきました。長い人生で、縁もゆかりもない人間が、ここ千里が丘の地で、ある時間を共有し、何かを成し遂げ、そしてまた別の道に進んで行くのは奇跡ともいえる偶然ともいえますし、宇宙の神が書いた必然の出来事なのかもしれません。しかし、この10年間教室に在籍された方々が相互の信頼と尊敬の念を持って、大阪大学皮膚科学教室を発展させてこられたのは紛れもない事実です。「シンクロニシティ(Synchronicity):意味のある偶然の一致、共時性」という言葉は最近ある方から教えて頂いた言葉ですが、まさにこの10年間に大阪大学医学部皮膚科で偶然出会い、そして皮膚科医として成長されてきた先生方、そしてサポートして頂いたすべての方の今後のご自身の人生の目標が達成される事を願います。
 残された任期はあまりありませんが、今までの仕事を集大成する過程で、若い世代に私の考える皮膚科学を伝えていきたいと考えます。また今の私の興味は人間の持つ、5感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)をセンシングする分子がすべて皮膚に存在し、皮膚が人間の感覚や存在を規定しているのではないかということを知ることで、すでにロドプシン、TRPなど視覚、嗅覚、味覚などのセンサーの皮膚細胞での存在が明らかにされつつあります。今後も皮膚という臓器の重要さをさらに知り、その異常を是正し、若さを保つ作業の重要性を認識しながら、さらに皮膚科医としての研鑽を積んでいきたいと考えております。この10年間のご支援、ご助言にたいし心より感謝を申し上げ、返礼の言葉とさせていただきます。

大阪大学大学院医学系研究科教授 片山一朗
平成26年9月30日掲載

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