教室関係コラム

2015.06.20

第114回日本皮膚科学会総会

114回日本皮膚科学会
学会会頭 古川福実和歌山医大教授
パシフィコ横浜
2015.5月29-31日
テーマ:デルマドリーム

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 古川福実先生が掲げられた学会テーマ「デルマドリーム」どおり皮膚科の夢を俯瞰させるプログラムで構成された学会であった。会頭講演では古川先生が病理医としてのルーツをもたれ、大学院で今の研究の礎となったループスマウスの研究の紹介をされた。和歌山医大皮膚科ホームページにも掲載されている古武弥四郎先生の有名な言葉(写真)を古川流のウイットの聞いた解釈で紹介され、素晴らしいシンボルマーク誕生秘話や古川先生の皮膚科学そして自然科学に対する夢が短時間で語りつくされた講演であった。

 学会後、古川先生から会長講演や基礎関連講演は金曜の平日にしたと聞いた。その心は大学院時代?古川先生がある学会の事務局を担当された時、京大時代の恩師濱島義博先生が「自分の専門領域は例え聴衆の数が最低でも一番大きな部屋でやれ」と言われたからとのこと。濱島先生は今や絶滅した古武士の風格のある教授であったが、その考え方は和歌山医大皮膚科のホームページの濱島語録として読む事が出来る。今回古川先生の承諾(事後)を得てPDFを添付した。特に若い先生には一読、十読,百読を勧める。

 アレルギー学会同様、皮膚科学会でも今専門医制度改革を見据えた教育プログラムの見直しが行われているが本学会でもその問題点を論議するシンポジウムが組まれ、島田理事長がその現状を総括された。ただ地方皮膚科教室の疲弊の状況や皮膚悪性腫瘍や膠原病などの重症疾患への若い皮膚科医が参入しない現状を討論する場がもっとあってもよかったのではないかと思う。女性医師をいくら支援しても現状が改善すると私自身は思わない。むしろ重要なのは難治な疾患、重症の患者、病因論の不明な疾患の治療、研究に先陣を切って取組み、若い皮膚科医を参加させる熱い気概を持った指導医を一人でも作りだすほうがはるかに重要と最近は考えるようになった。この問題は引き続き開催された世界皮膚科学会でますます感じた。若い皮膚科医よ!!! もっともっと 患者さんの発疹を観察し、皮膚科学を勉強し、生命生物学を研究し、世界と繋がり、皮膚科の発展と患者さんへの新たな治療の創出に貢献してください。
参考に濱島語録を読んでください。

 

濱島語録 (和歌山医科大学皮膚科教室ホームページより抜粋

●有能なる青年科学者を最大限に進歩発展するように指導すること。
●研究の自由はもっとも尊重されなければらならない。しかしその自由の代償としてそれに対する責任はすべて自分が取らなくてはならない。これが自由の原則である。
●研究室では相互の和、チームワークがもっとも大切であるし、また絶対必要な場合が多い。一切のエゴは許されない。
●研究人生で最も大切な年齢は26~34才まで。この期間にノーベル賞を目標とした猛烈な研究をやって人生生き甲斐のある青春を送って欲しい。人生自分が選んだ道にすべてをかけて純粋に打ち込むことが出来るとは、これ程幸福なことはないであろう。
●研究室で最も大切なことは、どんな簡単なことでも実際にやってみて、いかに自分は不器用であるか何事も実際にやってみると非常に難しいものであるということを思い知ることである。そして何よりも先ず卓越した技術を身につけるべく努力すべきである。
●自己の研究成果は他人によって認められるものであって、自分自らで認めるものではない。自分自身は、得たデータを正直に示すだけでよい。しかし他人というものは悪口こそ云えなかなか認めようとはしないものである。それを認めさせようというのであるから、そこにプロの厳しさがある。
●その顕微鏡写真は一枚一枚真心をこめてとること。これまでの研究の苦労の最終の総まとめがその写真であるし、また最高の写真を撮るためにはそこに到るすべてのテクニックが最高でなければならない。
●濱島研究室で研究を共にしてきた者は、必ず世界の檜舞台で大活躍しなければならない。
●大学院、助手は一年間に2つ以上の英文の原著論文を教授の許に提出しなければならない。発表者は直接研究に携わった者のみにして、たとえ教授であってもその研究を直接に行っていない場合にはその名前を列記することは許されない。
 論文を書かない者は研究者としての義務を怠ったものとして破門されるであろう。
 論文一つ書けない者は以後の一切の発言が認められなくなるだろう。
●研究室での生活は、どんな些細なことでも綿密にかつマメにノートすることである。
●いかなる場合でも遅刻を許さない。
●すでに他で公表されたものと同じ研究は一切してはならない。他人のやったことは絶対に真似するな。
●研究室貴族を追放する。研究室貴族とは他人の洗った硝子器具を平気で使い、使いっ放しにして洗いもせず跡始末も出来ず、また自分の部屋の清掃すら出来ない先天的不能者を研究室貴族という。お互い共同使用の礼儀を心得、助け合いかつ他人のために尽くすことにつねに心懸けること。
●格調高い人間となれ。人の悪口を絶対云うな。うそをつくな。細かいことにとらわれるな。常に世界の科学者たる自覚をもて。
●労力を惜しむことなくマメに立ち働こう。何事も積極的に行動することが望まれる。
●判らないことは遠慮なくどんどん聞くこと。聞けば誰でも親切に教えて呉れるものである。
●自然科学の研究でもっとも大切なことはどんな些細な現象でも「何故こうなったのか」という疑問を驚きの心で見出すことであり、また見出すべく努力することが必要である。
●諸君が毎日帰る時に、病理玄関を出た際、西側の医化学の教室*を見よ!!彼らはものすごいファイトで研究しているぞ。諸君の帰る時、まだ蛍光灯の輝いているのを見るだろう。彼らに負けるな!!

* 第一講座 早石 修教授
http://www.brh.co.jp/s_library/j_site/scientistweb/no28/

* 第二講座 沼 正作教授
http://mail.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/~htsukita/new-pub/Numa%20jidai.html

和歌山県立医科大学皮膚科
http://www.wakayama-med.ac.jp/med/hifu/derma/derma.html

大阪大学大学院医学系研究科教授 
片山一朗 平成27(2015)年6月20日

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