教室関係コラム

2017.06.20

第116回日本皮膚科学会総会

第116回日本皮膚科学会総会
会場:仙台国際センター
会期:2017.6月2-4日
テーマ:Neo-dermatologyーの時代を生き抜く

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 昨年12月の第41回日本研究皮膚科学会に引き続き、相場節也東北大学皮膚科教授を会頭として第116回日本皮膚科学会総会が仙台で開催された。今回の大会テーマは「ネオデルマトロジーの時代を生き抜く」ということで、もともとNeo-dermatologyという言葉はペンシルバニア大学のKligmann教授が20世紀から21世紀に変わる時代に提唱されたとのことを会長講演で紹介された。テーマの根幹はAI時代の到来を見据えて、次の時代の皮膚科学がどう変化し、その中で我々皮膚科医はどういう戦略を持って医学の中で自身のPresenceを発信していくかという大きな問題と、2011年の大きな自然災害から東北地方がどう復興し、東北6県が未来を見据え、どう連携していくかを2017年6月の素晴らしい回復の現状を紹介することで会員の先生への支援のお礼とされることと理解した。そのための教育講演やシンポジウムを中心にプログラムや懇親会が企画され、相場先生の意図が見事に反映された素晴らしい総会であった。

会長講演  Neo-dermatologyの時代とは

 会長講演の座長は田上八朗名誉教授が務められた。先生の樹状細胞の活性化機序の素晴らしい仕事を端緒として環境と対峙する皮膚の免疫機構制御機構の解明を一貫して行ってこられた研究の成果を拝聴した。ハプテンを塗布すると、ランゲルハンス細胞が活性化し、所属リンパ節に移動するが、表皮に残るランゲルハンス細胞が大型化し、表皮下層に留まる観察所見は素晴らしい、蛍光染色所見とともに今でも鮮明に私の記憶に残っている。この後、招聘講演を務められたNIHのSteve Katz教授のラボには相場先生が東大皮膚科以外で初めて日本人留学生ということで、当時の懐かしい写真とともに相場先生の研究の一端も紹介された。Katz教授は15年前には想像できなかった5つの疾患の新しい治療の方の紹介と、次の10年に解決が予測される10の研究テーマを挙げられていたが、その5番目に痒みのメカニズムの解明を挙げられていたのが印象的であった。また相場先生は教室の病理診断を凡て一人でなされ、その数2万件以上と聞き、改めて田上先生の臨床への熱い思いが相場先生を通じて東北大学の皮膚科医局に脈々と受け継がれていることに感動したのは私だけではないと考える。一例一例の多方面からの解析結果を英文雑誌に症例報告し、新しい知見として症例集積していくことでDFSPがCD34陽性に染色されることを見出された素晴らしい研究が多くの論文で引用されているのは当然の帰結かと考える。田上先生の恩師の太藤重雄教授の研究手法も同じであり、座長席で本当に嬉しそうであった。この後は土肥記念国際交流講演ではミュンヘン大学のThomas Ruzicka教授が基底細胞癌の講演をされた。Ruzika教授の幅広い臨床の知識と経験に基づいた講演はいつ聞いても素晴らしく、ドイツ皮膚科学の歴史の奥深さを毎回感じる。

 教育講演は今回58のテーマが準備され、スポンサーセミナーと合わせると会員の先生方の要求には十分すぎる内容であったかと思うが、一部でオーガナイザーの先生の専門と異なるセッションもあり、今後の検討課題としていただきたい。一般演題はすべて口頭での発表が義務付けられていたが、質疑応答がなく、残念であった。大変かとは思うが岡山大学の岩月教授が会頭を務められた113回総会で採用された、「会員に聞いていただきたい素晴らしい内容の演題」を前もって選択し、短時間でも討論を行う方法が良いかと考える。その場合も、座長の選定が最も重要であることも含め、また改善していただきたい。
特別セッションは東北復興に関する講演とNeod-ermatologyに関する講演がほぼ半分づつ企画されていた。その中で印象に残ったのは最終日の免疫に関する最新研究のセッションで、ハーバードのWinau FlorianがNatureに報告したCD1aにウルシオールが結合し、HLA非拘束性にウルシかぶれ患者のCD8細胞を活性化させるという報告は驚くような実験結果であった。また表皮由来脂質が乾癬で自己抗原として作用するという話も驚きで、座長の天谷先生が仰られたLipid immunologyの幕開けが感じられた。企業展示と懇親会はうん千万円の費用がかかったとされる特設大テントで行われ、東北6県の名物料理やお酒など、会員の先生方も十分に楽しまれたようであった。会期中は良い天気に恵まれ、杜の都仙台の名前通り、目に眩しい初夏の仙台を満喫させいただいた。事務局長の山﨑先生、実行委員長の菊池先生にもお礼を申し上げる。

理事の先生方と

大阪大学皮膚科教授 片山一朗
平成29年6月20日

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