教室関係コラム

2017.09.07

15th International Symposium of the Cutaneous Biology Research Institute

15th International Symposium of the Cutaneous Biology Research Institute
Yonsei University, Seoul
President: Kee Yang Chung, Professor and Chairman of Yonsei University

大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗

 デンバーで開催されていたIPCC2017に引き続き、以前から招待されていた延世大学15回皮膚生物学研究所主催の国際シンポジウムに参加し、講演した。この会は45年前から、Yonsei大学皮膚の研究レベルを上げるため、最近は年に一回開催されているそうである。毎回4~5名の海外からのゲストの講演と韓国からの若手の教授4~5名の講演からなるシンポジウムで今回は「Skin barrier」と「Immune dysfunction in atopic dermatitis」がテーマで、私は「Breakdown of skin homeostasis in the pathogenesis of atopic dermatitis」のタイトルで今我々の教室で行われている研究を中心にアトピー性皮膚炎の病因と治療に関する講演を行った。資生堂の傳田さんが午前中にアトピーの痒みの講演をされ、アトピー性皮膚炎で報告されている表皮内に伸長する末梢神経が2光子顕微鏡での透明化皮膚の観察では正常人で表皮内神経の伸展が見られ、アトピー性皮膚炎患者では逆に減少していることを綺麗な画像で紹介された。この現象は我々の観察結果とは逆であり、興味深いがその意義に関する考察がなされておらず、今後の研究の進展が望まれる。また乾燥皮膚で表皮ケラチノサイトからのコーチゾールが誘導される可能性を報告された。これは老化でHSD1の発現が亢進するという我々のデータに近いが、先に講演したUCSFのDr. Manが発表した、老化で起こる皮膚のバリア障害モデルで、血中サイトカイン濃度が亢進するというデータと矛盾するという質問があった。彼からは副腎由来のステロイドとのバランスの検討が必要とのコメントがあった。その他ではコペンハーゲンから招待されていたThyssenがアトピー性皮膚炎患者のフィラグリン遺伝子の多型の頻度が緯度の上昇と相関するという綺麗なデータを紹介し、進化の過程でフィラグリン遺伝子変異によるビタミンD3の合成促進が生存に優位に働いたのではとの結論であった。乾癬は逆かと質問したが、わからないとの答であった。彼は接触皮膚炎の研究で名古屋の学会で会ったと向こうから言われて驚いた。
そのほかはシカゴの小児科医のPallerが小児アトピー性皮膚炎の総論を話したが、アメリカでは小児科医がアトピーを見ている現状が良く理解できた。その中でAhRのリガンド外用薬がアトピーの治療に向け開発中(G社)との話があった。それ以外では臨床のレビューや留学時の仕事の話が中心であまり目新しい話はなかった。

 このシンポジウムではデンバーで一緒だったSang Ho Oh先生に面倒見て頂いたが、彼もバンクーバー経由で前日に帰ソウルのことで、出国時ながいQueがあり、100人位に先に行かせてくれと頼み、ぎりぎり間に合ったそうである。我々もロスに入国時、今回初めての入国者は機械で登録ができず長い列に並ぶ必要があり、高藤先生も1時間半かかったそうである。昨年モンタナシンポジウムに行った時にはなく、トランプのおかげ?と話し、した。彼は今年までペンシルバニア大学に留学していた若手の先生で白斑の他に幹細胞が専門であり、白斑治療に応用できる再生医療を目指しているそうである。デンバーで一緒だったCatholic University のBae先生も若手の先生だが、彼は臨床面から白斑患者のビッグデータをつくりたいとのことで、お二人とも若いが目的意識がはっきりしており、本当に生き生きとした澄んだ目で、Positiveな生き方が全身から発散しており、日本では絶滅しつつある方々で、延世大学、ソウル大学をはじめ本当に羨ましい限りである。女性医師が多くを占めつつある日本に比し、韓国では6割以上が男ということで之も良い意味での競争が良い医師を育てることになるかと思う。延世大学では教授が8人おられ、その中から今のChung 教授が主任教授になられたとのことで、これはソウル大学もそうであるが任期が4年と短いためのようである。この競争原理から優れたリーダーが誕生するし、長い任期で疲れだけが残る今の日本のシステムに導入したいシステムでもあるが、長期の研究戦略からは不満が残るようである。ただ多くの指導層がいることで 若い研修医も良い指導が受けられるし、前日の歓迎会でも若いスタッフから名誉教授までが集い、海外の方とも積極的に接しておられた。今の日本の中堅から上の人材不足と全く逆である。日皮や研皮が進めている如月塾や青葉塾の参加者が早く成長してくれることを心から期待する。
最後になるが、今回、韓国白斑学会の理事長のTae-Heung Kim先生とも話する機会があり、来年大阪で開催する第2回東アジア白斑学会(EAVA)にもたくさんの参加を約束していただいた。デンバーでも山形大学の鈴木先生方等発起人の先生方と日本白斑学会の設立が確認され、来年のEAVAで合同開催することが決まった。この点は 先生とも合意した。

大阪大学皮膚科教授 片山一朗
平成29年9月7日

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